掃き溜め

好きなことをプッシュする

パニグレを始めて半年、SFってやっぱ最強な話

 パニグレにハマって半年が経った。何だこのゲーム、おもろいやん……と熱が出てから半年間まったく熱が下がるどころか加熱していってるのでざっくりと感想とか面白かったポイントとかを語る。

 そもそもの出会いは友人からの勧め。
 自分から友人には無期迷途(強くて美しいお姉さんがいっぱい出てきて世界観も重たい最高ゲームなので全人類やってください)を勧めた代わりに、向こうからパニグレを布教されてやってみた。 

 そしたらストーリーがほんとに良くて……
 キャラクターも良くて……
 世界観がとことん残酷で……
 そのなかで輝く人類の理性と文化性……
 これぜったいSFオタクが好きなやつ……!

 気がついたらパニグレが3年かけて展開してきたストーリーを3週間で一気読みし、冷枷イベントあたりで最新に追いついて、そのあとストーリー全体を3周ほど読み直して、weibo出情報収集したりtaobaoでグッズ買ったり、そんくらいにはハマった。
 完全新規の人間の感想とか、ご参考になれば幸い。

 なお、PRとかでは一切ない。個人の趣味で書いています。

 

パニシング:グレイレイヴン

grayraven.jp

 

 

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インターステラーを見たら感情が破壊された2020

 この日、私の人生は変わってしまった。
 
※ 死の直前のツイート
 
 上映後の私はひどい有様だった。目は腫れ、手にしたハンカチは絞れそうなほどに濡れ、立ち上がることも出来ず顔を覆い、食欲も言葉も何もかもが消えた。誰かに泣かされたのではない。インターステラーを見たら勝手にこうなってしまったのだ。
 見に行ったきっかけは友人がインターステラーを一押ししてくれたこと。正直なところ、宇宙を題材にした映画なんて、ぶっちゃけ劇場版遊戯王THE DARKSIDE OF DIMENSIONSとオデッセイしか見たことがなく、内容の想像は全くつかなかった。まあきっと、規模のでかい困難に立ち向かう人類を見守る的な話なんだろう。ネタバレが極度に苦手な私は一切の前情報を仕入れず、軽い気持ちで劇場に向かったのだった。
 
 そんなもんじゃなかった。
 インターステラーは全てを超越していた。
 
 
 圧倒的な情報量に感情を破壊された私は、同じく「無」となった友人と共に味のしないメシを食べ、その間ずっと「ああーーー……あーー……」とうめき声を漏らすだけの生物になっていた。
 「無」と書いたが実際には無ではない。喜怒哀楽をこえた巨大な感覚が脳内を500%侵食し、あまりの巨大さに表現する手段を失ったが故に「無」と書くしかない。そういうタイプのやつだ。「それ」があまりに重く巨大なため、感情の器が耐えきれず破壊されてしまった。そうなると人間は「あー……」しか言えなくなってしまうのだ。実体験である。
 
 以下、3回見た感想(もっと見たいのになぜ上映は終了してしまうんだろう、切ない)や考察をぼろぼろと綴っておく。当然メチャクチャにネタバレがある。なお他の人の考察は一切見てない。これを投稿したら読む。よって考察に変な点があってもツッコミは無用。
 
***
 
 初見、エンデュランスが出発し、地球がどんどん遠ざかるところで早速私はさめざめと泣いていた。あまりにも感動的なシーンだから、ではない。完全に別の文脈が原因で泣いていた。
 土星付近に到達したエンデュランスから見た地球。出発したばかりの頃は雲の渦が見えるくらい近かった地球が、気づけばただの丸になっていた。
 「あっ、これ "Pale blue dot" だ」と思ったら涙が出てきて、止まらなくなっていた。このときの私は、エンデュランスと似たような航路で旅したNASA無人宇宙探査機・ボイジャー1号と2号のことを思い浮かべていた(どちらも地球を出発した後に土星付近を通過している)。彼らの見たであろう景色を、よりによってIMAXの大スクリーンで追体験させられてしまった。あまりに果てしない旅路、絶望的なほどの孤独。とつぜん胸の中にこみ上げてきた感情を処理しきれなくなって、私は泣くことしかできなくなっていった。
 ただしく言えば、エンデュランスが見た地球はそれなりに大きく、まだドットと呼べるようなサイズではない。しかし、ワームホールに飛び込んでしまえばドットすら拝むことはできない領域に突入する。あの青い丸こそがエンデュランスが最後に見た地球、エンデュランスにとっての "Pale blue dot" だった。クーパーたちが向かう場所はそれほどに遠く過酷なのだ。
 だというのに、乗組員の命を支える船は土星に比べてとてもとても小さい。当然ながら乗っている人間はもっともっと小さい存在ということになる。あの場所で「点」と呼べるのは地球ではなく、人間の方なのだ。なんという孤独だろう。宇宙は広くて暗くて綺麗で、どうしようもなく寂しい。謎の感動で押し潰されそうだった。
 
 
 ミラーの星については思うことがたくさんある。もしかしたら一番好きな星かもしれない。住みたいかどうかは別として。
 初見は初見なりに衝撃的だった。無残な姿のビーコンを見たとき、私はミラーの身に起きたことをあれこれと想像してしまった。これだけ海底が浅いならミラーが着いたときには陸地だったのでは。陸があり、水があり、人類にとって理想的な環境だったのに、救援を待っている間に海水面が上昇するなどの気候変動が起きてミラーは亡くなってしまったのではないか。その間にミラーが経験したであろう恐怖や孤独はどれほどだったのか……。
 でも、その憶測は「山じゃない」で粉砕される。そして「引き波だ」で別の絶望へ塗り替えられた。
 このシーンについて人様の感想を漁っていたら(考察は見ていないが感想は死ぬほど漁っている)「海が浅すぎるだろwww」的なツッコミをちょいちょい見かけたのだが、そこだけは違うだろと逆にツッコミを入れさせていただきたい。波は押し寄せてくる前に必ず引く。インターステラー内の波は、この「引く」の規模が段違いだった。水がなくなりすぎて海底に立てちゃうレベル。それだけの量の水が集まったらそりゃ「山」にもなる。(チラ見した情報ではガルガンチュアが凄まじい強さで引き寄せているからあの高さの波になるらしい。仕組み的には津波ではなくクソデカ大潮といったところ?)
 想像を遥かに超える自然を見てもパニックにならず、的確に指示出しできるクーパーの精神力、波が去ったあとのクーパーとアメリアの会話は凄まじいものがあった。感情のコントロール力が人間離れしているとすら感じる。アンガーマネジメントってこういう感じなのだろうか……。二人とも感情が爆発しているのに、気づけば技術的な会話にシフトしている。こういうクルーの知的で無駄のない所作が全編に渡って続くので、見ていて全くストレスを感じることがないのもこの作品の良いところだ。
 ミラーの星は初見と2回目以降で大きく印象が変わる。前知識があるとドイルとアメリアが船外に出た時点で「逃げてーーー!!!」と叫びたくなるし、背景にチラチラと「山」が映ってヒヤヒヤするし、情緒がもう大変。BGMの秒針の音は1つ鳴るたびに地球では1日経つという情報を見てからは更に情緒がぶっ壊れた。いや情緒が大変にならないシーンなんてこの映画にほとんど無いんだけど。
 なお、クーパーたちが去ったあとのミラーの星については自分なりに2点ほど考察したことがある。
 ひとつ。最後に波間に浮いていたのはミラーではないか。ほぼ生身で波の衝撃を受けたドイルと、(おそらくは)船内で衝撃を受けたミラーでは、後者のほうが遺体の状態が綺麗なのかなと思った(逆かもしれない?)。
 もうひとつ。ブラックホールに近い星ほど惑星の衝突などの変異が起こりにくいという話があった。ならば今回のクーパーたち一行はミラーの星にとっての「衝突した惑星」であり、残った遺体は「変異」になりうるのではないだろうか。水と有機物だけの世界に突如として放り込まれた人体。その内側には菌やらなにやら様々なものが含まれており、酸素などの気体もおそらくヘルメットなどの中に残っていると推察される。そして、きっとこの星には存在しなかったものもあるに違いないのだ。だとするならば、元々あったものと新しくもたらされたものが反応して、原始的な生命や馴染みのある生命体に進化していく可能性はゼロではない、と思っている。ただし進化には数億年単位の時間が必要だし、ミラーの星でいう数億年は人類には途方もなさすぎる時間だ。もし何かが生まれたとしても人類とは出会えないだろう。
(なお文脈がすっ飛ぶのだが、手塚治虫火の鳥未来編で海に「贈り物」を垂らすマサトを思い出して感情が余計にメチャクチャになった)
 
 
 ただでさえショックな事件があったのに、母船に戻ったら戻ったで老けたロミリーと23年分のビデオレターが追い打ちをかけてくるのは、ずるい。「起こりうることは起こる」かもしれないけれど、一気に起こりすぎても受け止めきれないよ……。
 トムからのビデオを見ながら涙するクーパーを見ていると、こちらも感情がぐしゃぐしゃになる。彼女ができた、からの子どもの死の報告、更に父のことを諦めるという悲しい宣言が時間の残酷さを物語る。息子の嬉しさや悲しさに寄り添えないクーパーの無念は相当なものだっただろう。それに、研究の成果を地球へ送信できず、いつ戻るかも分からない仲間を待つしかないロミリーの孤独が、コールドスリープに入らなかったという行動だけで語られるのが辛い……。
 この、「通信が一方向的」という部分に私は非常に引っかかりメチャクソに泣いた。文脈で語りがちなオタクなのでまた別作品を引用させてもらう。
 賭博黙示録カイジに下記のようなモノローグがある。 
通信は基本的に一方通行だ
本当に自分の心が相手に届いたかどうかは誰もうかがいしれぬ
(中略)
しかしそれで仕方ない
通信は通じたと信じること 伝達は伝えたら達するのだ
それ以上を望んではいけない……理解を望んではいけない……!

   このモノローグの前後では、人間はみな孤独を抱えているが他の人間の存在を感じることで希望を見出せる、といったようなことが描かれている。この状況がまさにインターステラーの内容に刺さる……!

 届くと信じてビデオレターを送るしかない地球のメンバーの孤独。思うように返事のできないクルーの孤独。それだけじゃない。直接会話のできるマーフと教授の間にもコミュニケーションの齟齬があった(マーフに数式を指摘されて逃げるように去る教授の背中は孤独そのものだ)。結局のところ、遠隔だろうが直接だろうが言葉は一方向的にしか伝わらず、人間は振り回されるばかりだ。なんて寂しくて悲しい話なんだろう……。
 しかし、他者の存在そのものが希望になりうることもある。本棚の向こうの幽霊、マン博士が見た「神」、ロミリーが23年待った3人の仲間は、人間そのものが秘めている希望を描いているのだと思う。寂しいばかりではないのもインターステラーの良いところだね……。
(個人的に、上記の言葉が出てくる第86話「孤立~」第87話「希望」はインターステラーにとても通じるものがあると思ったのでぜひ読んでみてほしい)
 
 
 さて、インターステラーを語るにおいて絶対に外せないのがマン博士の存在だ。彼はあまりにも人間だった。エンドロールにはDr.Mannとしか書かれていなかったが、Wikipediaでフルネームを見て震え上がってしまった。ノーラン監督……そこまで考えて……?
 特にTARSとマン博士の対比が見事だと感じた。TARSやCASEは「機械には感情がない」というスタンスでいる。過酷な環境での単独作業もなんのその、誰かが操作しない限り任務を放棄することもない。ユーモアも正直度も人間の設定次第でどうとでもなる。まるで人間のように話すから勘違いしそうになるが、彼らはどこまでも機械でしかないのだ。
 
(このことを語るのにちょうどいいニュースがある。私はTARSを見ながら下記の記事を思い出していた。まさにTARSたちが人類に対して思っていること(思っているという書き方もおかしいけど)なのではないだろうか/
「私は人間の敵ではない」人工知能が生成した文章が不吉すぎて震えるレベル : カラパイア http://karapaia.com/archives/52294500.html )
 
 対して、マン博士は「機械に恐怖は分からない」と言った。この台詞が彼の行動の全てを表していた。天才とまで言われる頭脳の持ち主で、クーパーたちのように感情のコントロールにも長けていたであろう人物が、最終的には感情に負けた。任務のためだと言いながら起こした行動はどこまでも矛盾していた。平気そうな顔をしていたけれど内面はボロボロだったんだろう。
 引用した記事でAIは「人はこれまで通りに(中略)争い合えばいい」と語っている。その言葉を反芻しながら、だだっ広い氷の大地で男がふたり殴り合っているのを俯瞰カメラで見た。虚しさの極地。最果ての地まで来てなおも争うことしかできない人間。これ以上ないくらい、人間だった。
 「君はまだ試されていない」とクーパーに告げたとき、彼は何を思い返していたのだろうか。ひと目見て移住が無理だと分かる星に辿り着いて、来るかも分からない助けを待つしかなくて、話し相手もいなくて……。KIPPはきっと博士と揉めたのではないかと思っている。だってKIPPには恐怖が分からないから。博士の行動の理由が分からず、KIPPは最後まで捏造データを送るのに反対していたんじゃないだろうか。唯一の相棒に理解してもらえなかったら、そりゃあショックだっただろうなあ。
 それを考えると一方的にマン博士を悪だと糾弾することはできない。コールドスリープから目覚めて、誰だか知らないおじさんに言葉もなく抱きついて涙を流す博士の感情を否定したくない。少なくともあの瞬間は、全宇宙の中で誰よりも正直だったと信じている。
(そういえば悪のありかたの話もアメリアが触れていた。これも伏線なのか。作中の会話に無駄がなさすぎて震える)
 
 
 インターステラー内で人間らしさを極めている人物といえばもうひとり、ブランド教授がいる。初見のときは病室のシーンをどう受け止めればいいか分からずマーフと一緒に混乱した。何のためにそんな嘘を……!? マン博士も共犯みたいだし、ロミリーも妙に冷静だし、驚いていたのはクーパーとアメリアだけ。
 これは2回目以降に解釈が進んで、自分なりの結論が出せた。間違ってるかもしれないけど。
 教授もクーパーと同様に娘がかわいくて仕方なかったのだと思う。だからメチャクチャ石橋を叩いた。12人の先駆者たちを送り出し、ワームホールを生きたまま通れるという証拠を掴み、向こう側からの信号をキャッチできることを確認して、更に旧知の仲で腕のいい飛行士を確保した。娘を送り出すなら絶好のタイミング。しかも本命はプランB。万が一のときは代理出産できる母体にもなれる。更に運が良ければ恋人と再会して、新天地でアダムとイヴになれるというわけだ。これらの点から、教授は人類を救うためと言いながらも娘を最優先に行動していたんじゃないだろうか。この辺は完全に推測の域を出ないので、他の方の考察をじっくり読みたいところ。
 
 
 さて、話の本筋をストーリー展開に戻そう。マン博士のやらかし大爆発、吹っ飛ぶエンデュランスとの緊迫のドッキング、運動の第三法則、誰も見たことのない世界への突入。怒涛の展開には息を呑みっぱなしだった。正直ここで感動とかする余裕はない。観客席ごとガルガンチュアに引き込まれた。とにかく映像と音響がすごい。IMAX効果なのかは分からないが右から左から音がする。目の前から光の粒が飛んできてはバラバラと座席に当たって砕けていく。宇宙だった。フィクションみたいなノンフィクションだったといっても過言ではない。私たちはクーパーと一緒にブラックホールへダイブしていた。
 凄まじい状況の中、起きたことを実況するクーパーの声が嬉しい。恐怖でいっぱいというよりは未知の世界を楽しんでいるような。なんとなく「大丈夫かも」と安心させられる。今にも吹っ飛びそうな意識の着地点があの声のところにあると思うと、ちょっとだけ気が楽になった。
(ただ一瞬、強制脱出のところだけHADESを思い出して意識が地球に戻った。本当に座席横のレバーを引っ張って強制脱出するんだなあ。私は一足先に5次元世界へ到達してHADES世界の扉をノックしていたのかもしれない。最高だ……。HADESに対する巨大感情は別記事をどうぞ)
 辿り着いた先、4次元立方体?の静寂がおそろしい。でも好きな静かさだった。セットを作って撮影したと聞いたけれど、たしかに線の一本一本が質量を持っているように見えた。こわい。すごい。なにこれ。
 これまでの伏線が綺麗に回収されていく様は圧巻だった。マーフの愛した幽霊の正体……。宇宙の果てまで飛んでおきながら、砂嵐の真っ只中に戻ってくるとは。
 STAYのメッセージを送るクーパーがこれまでにない程取り乱している。俺を行かせるな、と本音を叫ぶ。あんなにクールなクーパーが、本当は恐怖や孤独や後悔を抱えていたことが露見する。完璧超人に見えても、彼の本質は私たちと同じ人間なのだ。涙が止まらない。マーフは「いつも同じ本が落ちる」と言っていたから、クーパーは何度も何度も必死にSTAYのメッセージを送ったのだろう。(ここで遊戯王Rの「こんなに近くにいるのに、触れられないって寂しいね」を思い出したりもした。遊戯王Rはいいぞ)
 それでも、TARSにヒントを貰って、自分がなぜここに来たのか気付いてからすぐに行動でへ移せるところは流石だった。あの腕時計がここで生きてくるとは……!監督ってもしかして天才なの?天才だったわ。知ってた。
 あまりにも美しくて頭のいいシーンだった。頭のいい感想は書けないけど。だって仕方ないじゃないか。クーパーの指に合わせて秒針が動くところを見た人間の感情を、ただしく言葉にすることなんてできるだろうか、いやできない(反語)。壮大でさみしいBGMがさらに感情を煽り立てる。IMAXの美麗な映像が涙で霞む。おかしいなあ、特別料金を支払って見に来たのに画面がろくに見えないじゃないか……。
 
 病院で目を覚ましてからの展開も圧巻だった。
 たくさんの家族に囲まれるマーフ。研究もプライベートもきっと上手くいったのだろうな。年の差なんて関係ないとばかりに軽口を叩くふたりが輝いて見えた。
 新しい旅立ちに向かうクーパーはやっぱりかっこよかった。新次元に到達した人類が作った宇宙船は、きっと想像もつかないくらい高性能に違いない。クーパーはコーン畑で無人機を鹵獲した時のようにはしゃぐんだろうな。そしてTARSにからかわれるんだろう。うわあ見たい、メッチャ見たい。その会話を聞かせてほしい。
 
 アメリアがエドマンズの墓標を立てているのを見て、無事到着できてよかった……という安心感がひとつ、背後に広がる施設を一人で作ったのかという感嘆がひとつ、いったいこれから何年眠ることになるのだろうという不安がひとつ。クーパーは早く迎えに行ってくれ……!
 それにしてもエドマンズはどうして助からなかったのだろう。時間が経ちすぎてコールドスリープの限界が来てしまったんだろうか。環境は穏やかそうに見えたけれど。もしもアメリアがエドマンズの遺体に遭遇していたとしたら悲しいね。
 
 トムは結局、マーフよりも先に亡くなってしまったのかな。もしコールドスリープできているのなら、マーフと同じようにクーパーと再会してほしいけれど。描写がなかったということは、そういうこと、なんだろうと思う。
 壮年のトムは家族に厳しくあたっていたけれど、彼は彼で限界が来ていたのだろう。父の生存は諦めなくてはいけなかったし、祖父や子供も失って、街からはどんどん人がいなくなっていく。加えて父から託された農業もうまくいかなくなってきていた。辛いことばかりだっただろうに。せめて家族にはそばにいてほしい、という気持ちが強くなりすぎた結果の行動だったのだと思う。
 少なからずマーフに対する劣等感もあったのではないかとも考えている。トムも成績は悪くない(どころか主席が狙えるクラスだった)し、本来なら農業以外の道があったはずなのだ。無人機を見つけてマーフが操作しているとき、後ろで見守っているトムは歯を見せて笑っていた。トムも科学に触れるのが楽しかったはずなのだ。でも大人になってみれば、トムは農業に従事する一方でマーフはNASAで研究者として活躍している。運命がもう少しだけ味方をしてくれていれば、ブランド教授のもとにいたのはトムだったかもしれない。マーフを家から追い出そうとした時の「出ていけ」にはきっと万感が籠もっていたのだろうと思う。
 マーフに抱きしめられて、すすだらけの顔に何とも言えない表情を貼っつけているトムがとても印象に残っている。これが彼本来の部分なんじゃないかな。トムとマーフとクーパーの3人で抱きしめ合っているように見えた。再会できて良かったね……。
  
 ***
 
蛇足
 
 こここらは、劇場版遊戯王THE DARKSIDE OF DIMENSIONSを引き合いにちょっと語らせてほしい。……えっ、まだ見てない?じゃあまずは円盤買うか、ドリパスで再上映のチケットを手に入れてくれ。インターステラーを語るのに遊戯王が必要なのかって?必要に決まってるわ!未知の次元とか人類の有り様とか宇宙開発とかの要素が好きなら何か感じるものがあると思うので原作漫画を読んでから見てみてほしい。アニメではなく。原作漫画の続きなので。あとカードゲームの知識は要らんので構えなくてOK。劇場で40回くらい見た人間からの助言なので精度は約束できると思う。たぶん。
 というわけでここからは劇場版遊戯王(以下TDOD)のネタバレも含む。
 
 クーパーが旅立つときの感覚は分からない。分からないけど、文脈から語ることはできる。
 家族を置いて未知の場所へ探索に出掛ける刹那、人間からは探検者としての壮絶な覚悟が滲み出るものだ。クーパーはトムとの別れの前にハグをして、車をやると言った。農業をしているときのクーパーにとっては、車や農業機械は技術者として接することのできる貴重な相手だったはず。それをトムに渡すということは、「自分の何もかもをお前に託すぞ」というメッセージでもある。トムは寂しそうにしているけれど、マーフのように泣きわめくことはしない。おとなとおとなの熱い約束だ(だからこそ23年後のトムは相当辛かったに違いない……)。このシーンを見て、TDODの例の場面が頭の中に蘇った。海馬は「後は任せたぞ」と普段からは想像もつかないほど穏やかな声でモクバに語りかけ、モクバは色々と心配しながらも「必ず帰ってきて」と返す。うわあああ……。トムだってきっと「必ず帰ってきて」と叫びたかったんだ……と考え始めたらもう涙が。止まらん。書きながら泣きかけている。
 海馬とクーパーの目的は正反対だ。片や家族のため、片や自分のため。でもその根本には、自分の持っている世界を守りたいという気持ちがある(海馬に関する説明は割愛する。原作海馬瀬人論文を書かなければ説明できない)。アメリアだって、ドイルだって、ロミリーだって、ブランド教授だって、マン博士だって、自分の中のなにかを守かりたかったんだ……。遠大な宇宙のストーリーであるはずなのに、最終的には人間の内面に思考が戻ってきてしまう。宇宙を扱う作品あるあるなのかもしれない。全然詳しくないけど……。
 
 人類全体を救うことはできるのか、という命題についてはインターステラーから答えを貰ったような気がする。
 TDODでは、藍神が理想的な人格の人間だけを高次の世界へ連れて行こうとした。争い合ったりする人間は新しい世界の秩序を乱す、という思想だ。そしてこれは、人類の愚かさや人類社会の醜さを許容する武藤遊戯によって打ち砕かれる(遊戯については論文がもっと書けてしまうので割愛する)。
 藍神を始めとしたプラナたちが目指した世界は、ブランド教授の目指した世界なんだと思う。ブラックホール内のデータが取れないままアメリアがプランBを成功させた場合、そこで生まれた人類は「自分たちこそが選ばれた人間だ」と考え始めるのではないかと考えている。特に世代を重ねていけばいくほど、人類にとって教授やアメリアは神の如き存在となる(人類を新天地へ誘った神(教授)と神の子(アメリア)。まるで神話の縮図じゃあないか)。いずれ人口が増えて信じるものが異なる集団が発生すれば、新天地であろうと人類は争いに身を投じていくだろう。プラナという選ばれた人間であるはずの藍神が、結局は憎しみを捨てきれず復讐に走ったように(藍神については論文以下略)。
 インターステラーでは、そうはならなかった。新しい次元でも人類の過去のありようが許容される。超未来の描写といえば無機質なビル街とか空飛ぶ乗り物とかのイメージが強いのに、インターステラーではそれがない。芝の生えたマウンドで、Tシャツを着た少年たちがボールとバットで野球をしている! これはかなり衝撃的なシーンだった。未来の人類が過去の人類に優しい。クーパーも「彼らはどうしてこんなに親切なんだ?」と疑問に思ったくらいに。
 マーフが紐解いた新技術が兵器ではなく人類を救うために使われたのも、未来の人類が過去に優しい象徴だと思っている。かつて、食糧難で戦う力もなくなった頃に、教授が船の開発現場で「ミサイルにならなくて良かった」とクーパーへ語っていた。食糧難が解決しても、人が人に優しくできる理想的な社会は維持されているんだ……。教授が見たら喜ぶかもね。
 
蛇足ここまで
 
***
 
 色々と書いてしまったが総括を。
 インターステラー、劇場で見れて本当に良かった。テネット公開記念の再上映ということだったので今後見る機会に恵まれるかどうかは分からないが、是非また劇場で見てみたい。なんなら冒頭のParamountのロゴあたりで泣き出す自信がある。
 私の好きになる作品は余韻が長い傾向があるように思う。何年も経ってから「あの作品のこのシーンはこういうことだったのかもしれない」「年をとって主人公の気持ちに同情できるようになった」などの味わいが生まれてくるのが楽しくて仕方ないからだ。インターステラーもこれからの人生経験を共に重ねていける良きバートナーになると思う。これからもよろしくね、インターステラー
 
 

曽根崎音ゲー心中

beatmaniaが無くなった世界で私は生きていけるのだろうか。
私は年を取った。学生時代にハマったゲーム、そして今もプレーし続けているゲーム、beatmaniaIIDXのプレー期間が人生の半分に達しようとしている。良くない言葉を敢えて使えば典型的な「老害音ゲーマー」だ。昔のUIは良かった、過去作のこんなジャンルが収録されないのは寂しい、長押しなんぞけしからん、等と音ゲーに対する妄言はすべて過去との比較になって出てくる。それもそうだ。明確に記憶に残っている数年来の思い出全部が音ゲーと紐づいていて、逆に言えばそれ以外が無い。過去の足跡は筐体の上にしか残っていない。

私の年表にも短いながらに音ゲーとの記録がある。田舎から初めて東京へ出てきた時、今は無い池袋のゲーセンで、田舎じゃツチノコよりも珍獣だったee'MALLが稼働していて、とても感動したのを覚えている。大学受験の時は宿泊したホテルの最寄ゲーセンで遊んだし、社会人デビューとSP十段デビューはほぼ同時期だった。先日のロケテストだって、前日までに残業を重ねて無理やり時間を作って参加してきた。あの時の案件のことは、手元にあるロケテストの整理券とともに記憶に残り続けるだろう。記憶の年表には西暦の代わりにbeatmaniaのサブタイトルがずらっと並んでいる。あれはHAPPYSKYの時。あれはResort Anthemの時。キリストの誕生から数えた年月よりも、音ゲーと共に歩んだ年月こそ私にとっては確かな「有史」だ。

しかしbeatmaniaはゲームである。それも手元に残るゲームではない。アーケードで稼働するタイプのゲームだ。ゲーセンでの現役稼働が終了したらどうなってしまうのか、見当もつかない。もしサービスが終了したとして、その後オフライン環境で動くかどうかも分からない。メンテナンスには大量のパーツが必要で、そっちの生産の方が先に終了してしまうかもしれない。巷ではレトロな格ゲーやSTGを集めた小規模ゲーセンがTV番組で取り上げられたりしているが、果たして音ゲーがレトロなゲームとなった時、かつて音ゲーで育った人間が通える場所は残っているのだろうか? 私と音ゲーは、あと何年、一緒に歩いていけるんだろう?

最近は、音ゲーで育った人間が音ゲーを作る側に回った感動的なエピソードが沢山見られるようになった。HELL SCAPER -Last Escape Remix-のDJ TECHNORCH氏のコメントの衝撃は永久に忘れない(まだ読んでない人はここから読んでくれ。私なんぞの駄文を読んでいる場合ではない)。きっとコメントが公表されていなくても、それこそBEMANIシリーズに限らなくても、作る側に回った人間がたくさんいて、今の音ゲー世界を回している。いい時代になった。かれらはずっと音ゲーと関わり続けていくだろうし、音ゲーじゃなくても新しいものを作り出して、ゲーム史を太陽のように照らしていくんだろう。じゃあファンは、プレイヤーは、どこまで付いていける? プレイヤーは月だ。太陽の光があってこそ存在感を放つ。ゲームは当然遊ぶし、ロケテストも行くし、ファンアートを作るし、曲を聴くし、ファンの活動だって無意味なものは一つも無く、全て価値のある行動になっていると私は信じている。だけど、だけど。一次創作物が無ければ我々ファンはファンで在ることすらできないのだ。音ゲーがなくなったら、beatmaniaがなくなったら、手元に残るのは機能を失ったe-amusement pass一枚しかない(技術革新が続けば最終的にカードすらなくなるのかもしれない。それくらい未来まで音ゲーが残っていてほしい)。いっそ筐体を火葬して、骨壺に納めた残骸を抱えて生きていられたらいいのに。でも骨壷には鍵盤も皿もついていない。やっぱり私はゲーマーで、彼岸花を踏みしめて墓参りするよりもゲーセンへ通うほうが向いている。

音ゲーがなくなったら、beatmaniaのシリーズが終わったら、私は生きていけるんだろうか。ここまで来ると私がしているものは恋か呪いか分からない。未来成仏疑いなき恋の、手本となりにけり。いや、手本になるのか? 相愛ならともかくとして、ファンというのは永劫の片想いに生きるものだ。心中は決してできない。だからゲーセンへ行く。行くしかない。グッバイ現世、またゲーセンで会おう。

アルバムHADESの話をする

9/1-2、HARDCORE TANO*C Wが開催された。参加した音ゲーマーも多いと思う。私もそうだ。もう何日も経つのに未だにイベントの余韻が抜けない。こんなイベントは久しぶりだ。

私がHARDCORE TANO*Cのイベントに参加するのは、TANO*C STRIKE IS BACKを除くと(特殊なイベントだったし)、10周年イベント以来になる。雰囲気もずいぶん変わったんだろうと色々不安に思ったりしていたのだが、完全に杞憂に終わった。現地にいる人全員が楽しいオーラ皆伝。好きなものに全力でぶつかっていく人ばかりだった。楽しんでいる人たちと同じ場所にいるだけなのに、どうしてあんなに楽しくなるんだろう? 楽しすぎて久しぶりにオープンからクローズまで会場にいた。「気を付けて帰れ!」がこんなにエモく感じられる日が来るとは。感慨深い。

HADESについてはもう何も語ることはないと思っていたけど、色々と起こりすぎて積もる話もあるので、少しだけアルバムの感想とか書きたいと思う。

そもそもアルバムの告知、あれがずるい。見るだけで息も絶え絶えだった。風呂入ってる間に告知が来るし。マジ全裸。防御力ゼロ。しかも旅先。風呂上がりに湯気ホカホカな状態で友達に告知出たって言われて半裸でTwitter開いたら「赤いアイツがやって来た」って書いてある。告知サイトが赤い。ジャケットの人が赤い。腕が赤い。なんかめっちゃノックしてる。しかもTシャツも出るらしい。嘘でしょ?なんで? 更に追い打ちをかける抱き枕カバー。抱き枕カバー?嘘でしょ???なんで?????とりあえず抱き枕カバーの写真をスマホの壁紙にしてソワソワしながら夏コミ1日目を待った。

夏コミ1日目。アルバムがHADESが出た日。アナザーゴッドの日。リミックスまである。ジャケットは美女。Tシャツも出る。クッションカバーも出る。抱き枕カバーも出る。ショッパーも出る。出すぎ。出すぎだ。

人生で初めて始発夏コミをした。逆三角の屋根の下で開場の拍手をしたのも初めてだ。枕カバーはまあ仕方なかったけど、実物を見られただけでも感激だった。等身大?の腕さん*1は思ったより大きくて頼もしい。触り心地が良さそうな雰囲気だった。ショッパーは透明感があって夏らしさ満点。Tシャツからはちょっとだけ工場っぽい匂いがした。やりきった。ひと夏の思い出。楽しかった。

さて、そのアルバムHADES。全国民に聴いてほしい。本当は全国民に差し入れてあげたい。2018年8月1日時点で日本の総人口は1億2649万人、今年の夏コミ1日目来場者数は約16万人、1日目来場者が全員HADESを買ったとしても残り1億2633万人がHADESを手にしていないことになる。勿体無い。残り全員にHADESを配るとして、アルバムは会場頒布価格1500円だったので、1500*126330000=189495000000円が必要になる。0が多すぎていくらなのか分からん。とにかくいっぱい万円なので私にはとても払えない。人生を賭けて支払ってもいいのだが、どうせ追いかけられるなら借金取りではなく肌が赤い人がいい。むしろ今すぐ追いかけてきてほしい。お願いします。そういうわけで私はダイレクトマーケティングしかできない。各自大至急HADESを購入するべし。

 

www.massivecirclez.jp

 

肝心のアルバムの感想はとてもじゃないけど文字にできない。夏コミから超特急で帰宅してすぐに聴いて、とりあえず泣いた。

全部エモい。Introductionからエモい。冥界の扉が開きまくってるし赤いアイツがやって来ている。ついでにオランダ感がすごい。イントロを聴いた瞬間から涙が止まらなかった。私の聴きたかったHADESがここにある。その辺の話は長くなるので後述する。まずアルバムの話をすると、アルバム全体を通して聴くのがとても心地良い。静かで不穏なイントロから始まって、盛り上がって、夏が来て冬が来て、最後のUN1TEリミックスが締めの1曲としてとても素晴らしい。心が洗われる。で、一通り感動してからIntroductionに戻ると冥界の扉が開く。自動ドアなの?ってくらい勝手に開く。そのままHADESを聴く。次のRegulusもイントロからエモい。サイケデリックな音を聴いて、Gramが暴れて、リミックスでノック音と足音を堪能して、UN1TE聴いて、冥界の扉が開いて、……あれ……このアルバム無限に聴ける……? 気が付いたら夏コミから2週間が経ち、9月になっていた。

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ちょっと話を戻すと、HADESのアナザーゴッド版は本当に「私の聴きたかったHAEDS」そのものだった。聴きたかったというよりも「見たかった」という方が正しいのかもしれない。ジャケットのイラストやTシャツや枕カバーもそうだし、かめりあ氏のリミックス*2もそうだけど、もしもHADESのムービーが違う内容だったら、全く違うものになっていたはずなのだ。でも、そうはならなかった。HADESが弐寺の曲だからだ。インパクトのあるムービーと、ユーザーが夢中になる譜面と、曲を遊ぶまでのかっこいい演出と一緒にHADESはここまで来た。アルバムのHADESも間接的ではあるけれど、ゲーム制作陣と作曲陣の夢の合作と言えるんじゃないだろうか? 曲とゲームの一体感、それこそ私がHADESに夢中になっている最大の理由だ。今回のアルバムはまさに理想を体現した作品だった。私の追いかけてきたHADESのすべてが詰まっていた。これがHADESだ。HADESを聴くとHADESの音がする。これ以上幸せなことはない。

そう。HADESを聴くとHADESの音がする。当たり前のことなのかもしれないけど、色んな出来事の積み重ねでHADESはHADESの音が鳴るわけで、数分の中に沢山の人の力とか人生とかが詰まっている。音ゲーマーは1クレジット100円ちょっと支払えば色んな曲と気軽に出会えるけれど、音楽って本当は1曲あたりの重みがすごいはずなのだ。HADESだって、世に生み出されるまでにどれだけの苦労があっただろう? 私がHADESに辿り着くまでにどれだけの偶然があっただろう? 私は私でしかないので自分の過去を辿ることしか出来ないが、詰まるところ私の人生のあらゆるポイントにHADESと出会うきっかけが散りばめられていたのだと思う。音楽を好きになったのも、音ゲーを教えてくれた友人と出会えたのも、ミリオンゴッド*3のタイトルを覚えていたのも、クラブに通うようになったのも、全部今日この日のためにあったのかもしれない。そう思うくらい全部つながっている。ただ、「生まれ変わってもまた好きになる」なんて漫画のような表現はできない。数え切れない偶然の積み重ねの上で出会ったのだ、生まれ変わってしまったら絶対に出会えない。色んなハードルを乗り越えて、今こうしてHADESを好きになることができて、本当に良かった。

で、イベントだ。新譜、夏コミ後のタノシー、何も起きないはずがなく。先述したとおり、タノシーWの1日目である。RED。赤い。ジングルがエモい。演出がエモい。周りにHADESのTシャツを着ている人がたくさんいた。エモい。

HADESのアナザーゴッド版はとてもとても箱映えする鳴り方をしていた。改装後のWOMBはハードな音がより良く映えるようになった気がする。真面目な感想を書いてるように見えるけど、実際は理性ドゥルドゥル大流出、マジ無理しんどいエモくて尊いって状態でそんなこと1ミリも考えていない。でもアルバムを聴き込んだおかげでカメラを構えるくらいの余裕は作ることができた。念願叶ってやっと箱で流れるHADESの動画撮影に成功した。撮影に行ってるわけじゃないんだけど、猛烈に嬉しい。おめでとう自分。
しかもVJがまさかの実写版、Jingleの素材と一緒に実写版、これでもかというくらいRED、廊下地帯も赤くて、いよいよ冥界入りしてしまった感がすごかった。

いつものアンセム曲と新曲と、なんだかMNKの足跡を辿るようなセットに感じてとても楽しかったし嬉しかった。体力残ってたら2日目も行きたかったけど、こればかりは仕方ない。かめりあ氏のリミックスは別の現場で狙いたい。

とても素晴らしいイベントだった。余韻が抜けない。冒頭にも書いたけれど、現場の雰囲気というのは本当に楽しいし、現場に集まってきた熱意のある人達に巻き込まれることで新しい感動が得られたりする。クラブはいい場所だ。行くまでのハードルは高いし、行ってみるまで楽しいかどうか分からない。でも、行かなければ楽しさも後悔も味わえない。行こうか行かないか悩んでいる人がいれば是非、一歩踏み出してみてほしい。

嬉しいことといえばもう一つ、前の記事を書いてから度々感想をいただく機会に恵まれた。よく作家には感想を送ったほうが良いという意見を見るけど、本当にその通りだと思う。生きる意欲がメチャクチャ湧き上がる。拙い文章でも書いてよかった。

読んだ人が一瞬でもHADESのことを考えてくれるきっかけになれたなら嬉しいし、ゲーセンで遊んだりサントラ買ったりアルバム買ったりしてくれたらもっと嬉しい。私はそれを後ろから眺めてニチャニチャ笑っていたい。

皆さんも好きなものを好きなように語って、健康になろう。

*1:Tシャツの柄の人。爪の長い男性はムービーに居ないしジャケットの人とも違うので腕さんと勝手に呼んでる。

*2:7/29のかめりあ氏Twitterより。「赤い死神が常にお前のそばにいる」ってセンスの塊すぎない?同じくリミックス名の由来に「Memento Mori」があるが、このタイトルを冠した曲が同じアルバムに入っているのも凄い。

*3:パチスロ。爆発力のある台。シリーズに「アナザーゴッドハーデス」がある。察しろ。

HADESの話をする

好きなものを好きなだけ記事にする流れに乗って、私は人生を豊かにしてくれた曲の話をする。音楽ゲーム、いわゆる「音ゲー」に収録されている曲の話だ。
ある程度音ゲーに詳しくない人にも分かるように書いたつもりだが、人生の半分くらい音ゲーで生きてる人間の書くことなので信用してはいけない。

■HADESは総合芸術だ

HADESという曲があって、簡潔に表現するなら私はこの曲が好きだ。全人類に聴いて欲しいし、見て欲しい。音楽なのに「見る」とはどういうことか? この曲は、曲だけでは構成されていない。どういうことかというと、beatmaniaIIDXという音楽ゲーム(以下、弐寺…にでらと読む)の曲なので、ゲームならではの要素……曲と、曲に合わせてボタンを叩くための譜面と、曲に合わせたムービーがセットで存在する。HADESに用意されたこの1セットが非常に素晴らしく、私の心を打った。実際のゲーム画面はYoutubeとかにたくさんあるので、是非見てみてほしい。有志によるプレー動画をいくつか紹介する。
Youtubeの規約に従って引用していますが、問題があればご指摘ください。

youtu.be

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動画を見ていただくと、弐寺の曲というのは

  • 譜面
  • ムービー

の3点セットであることが分かると思う。まずはそれぞれの要素のおすすめポイントを紹介したい。


まず曲。
私にとっては待ちに待ったMassive New Krew(以下、MNK)の新曲で、弐寺初収録の記念すべき曲であった。彼らのクールなサウンドは各自いろんな媒体で確認して欲しいが、とりあえず最新の新譜2種もたいへん良かったので今すぐ買って(ダイマ)。

www.tanocstore.net

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MNKは以前からCDのリリースやクラブイベントを通じて好きになっていたユニットだ。他の音ゲーにも沢山曲提供をしていて、いつか弐寺に来るのでは……という期待もあった。ので、「イベントを進めるとMNKの曲が出てくる」という情報を聞いた日の喜びようといったらなかった。しかもジャンルはハードスタイルだ!

そう、HADESは「ハードスタイル」というジャンルの曲である。ハードスタイルとは最強の音楽である。ハードスタイラー(ハードスタイルが好きな人たちのこと)はだいたい「最強」って言う。気になったらYoutubeとかでHARDSTYLEと入力して検索してほしい。何とかかんとかズ(ズの部分はだいたいZと表記する)みたいなアーティスト名の坊主スタイル男が力強い背中でDJしてる動画がいっぱい出てくる。最強だ。オランダとかが本場だが、国内にもアツいハードスタイラーが沢山いて、日夜かっこいい曲を生み出したり最強のDJをしたりしている。みんなかっこいいので自分の目と耳で確かめてほしい。

前置きが長くなったが、つまるところHADESも最強の音楽である。音楽用語に疎いながらも精一杯説明すると、強いキック、何かかっこいい音、そこにゲームを意識した畳み掛けるような音がドコドコ入ってくる。クラブで聴くような曲とは少し違った方向の、音ゲー特有の曲調に仕上がっているわけだ。最強と最強が合体して最強に見える。

ちなみに、弐寺には過去にもジャンルがハードスタイルと表記されている曲がいくつか収録されている。制作時期の流行りや作り手の個性が反映されていてどの曲も素晴らしいので要チェックだ。その辺については、約4年前の記事だが下記の記事が詳しい。

アンセム好き — 日本人向け anubasu-anubasuのHardstyle紹介 Vol.1 オススメ編

 

そして譜面。
弐寺には2つのモード、SPとDPというスタイルが用意されており、1曲につき大体6種類くらい譜面がある(先に紹介したプレー動画はSPとDPの一番難しいやつ)。私は幸いにもHADESに用意されたすべての譜面を遊ぶことができた。この譜面がどれも良い。演奏感がある。
弐寺にはキー音というものがあり、ボタンを押すと曲を構成する音の一部が鳴る。HADESは、鍵盤型のボタンを叩くとゴインゴイン鳴って、スクラッチを触るとプェープェー鳴る。ゲーセンで遊んでいれば、曲に加えて鍵盤を叩くパチパチという音が小気味よく混ざってくる。足元の台を通じて振動も伝わってくる。この一体感は、実際にプレーしないと伝わりにくいと思う。曲を遊び始めた瞬間から、プレイヤーと曲の二人三脚が始まるといえばいいのだろうか。プレイヤーがタイミングを誤れば音がずれてしまうけれど、頑張れば曲が完成していく。曲と一緒に遊んでいることの、一体感と達成感。音ゲーの醍醐味だ。

特にHADESは、譜面に緩急がある。曲が盛り上がるところではオブジェがガッツリ降ってくるし、静かになるところではオブジェも控えめになる。この緩急の付け方が絶妙だ。それと、難易度の割り当て方もちょうどいい。初心者から上級者まで遊べる譜面が割り当てられているから、色んな腕前の人におすすめできる。

そしてムービー。
ムービーが。とにかく。すごい。衝撃だった。これまで見てきた弐寺の曲の、どのムービーとも違った。すげー動くし怖い。おっさんが怯えるのもよくわかる。唐突なボクシング。なんか宇宙。女子高生。ノック。夢オチ? じゃない? なんだこれ!?
最初は怖かった。でも曲が好きだから、繰り返し見た。だんだん面白く感じて来て、もっとたくさん見たくなった。ゲームで遊ぶ時はムービーまで見る余裕がないので、他の人のプレー動画を一時停止しながら見るようになった。そして世界観の考察とか始めて、そこから沼だった。各地の悪魔の資料とか読み漁ったり、ときメモのバグ動画とか見たり、あの廊下のどこかの部屋に住みたくて物件情報とか見たりした。起きてる間はずっと二人(?)のことを考えていた。場所もコロコロ変わるし、赤い人は年齢性別等身すべてがコロコロ変わる。女子高生が可愛い。だが赤い。顔も怖い。それが何だ? よく見たら可愛くない? ていうか距離近くない? もしかして仲良い? これ茶番? 夢? 現実??? とにかく言い尽くせない魅力があって、私のスマホスクリーンショットフォルダは潤うばかりだった。

このムービーの凄いところは音ハメがきっちりしているところだ。アニメのOPのように音楽に合わせてキャラクターが動く。アニメと違うのはキャラクターたちが音楽から生まれているところだ。下記公式サイトの制作者コメントを参照してほしい。

p.eagate.573.jp

ドアノックも、宇宙旅行も、回る人も、曲由来の成分が動画担当の人のフィルターを通して2分間に凝縮されたということである。なんという感性だろう。

弐寺というコンテンツの面白さがここに詰まっていると思った。曲から、譜面とムービーが生まれてきて、1つのかたまりとしてプレイヤーに提供される。なんという合作だろう。弐寺という音ゲーでなければ実現し得なかった、1つの総合芸術。HADESは芸術なのだ。

■HADESはメンタルに効く

一つ個人的な話をする。この曲がゲームに実装されたのは年末の忙しくなり始めてきた時期で、私も非常に忙しい毎日を送っていた。誰よりも早く出社して誰よりも遅く帰る。しかも客先の古いビルに軟禁状態で、設備も悪ければ人間関係も険悪だった。運悪く長丁場になってしまい、半年ほどそんな状態にあった。周囲はみんな疲弊しきっていて、とても「つらい」と言える状況ではない。診断を貰ったわけじゃないけど、明らかに鬱の兆候が出ていた。毎日どうやって死ぬか考えながらの仕事。ブラックコーヒーと一緒に愚痴を飲み込む日々。

それでも、嫌だと思っていたこと一つ一つをHADESが緩和してくれた
通勤ラッシュの中で聴くハードスタイルはやっばり最強だった。満員電車の悶々とした雰囲気はハードスタイルのキックが蹴散らしてくれた。強い音を聴くと、自然と強い気持ちになるのだ。当時HADESの音源は発売されていなかったので、とにかく色んなハードスタイルを漁っては狂ったように聞いていた。Youtubeの閲覧履歴が坊主頭の屈強な男たちで埋まった。

HADESをもっと聴きたかったけどゲーセンに行く時間がなく、動画サイトでムービーを観察する日々が続いた。毎日見ていると、ムービーのおじさんに親近感が湧いてきた。疲れているような、悩みのあるような。げっそりしたおじさんの雰囲気に自分を重ねていたのかもしれない。あの人も毎日追い詰められて、疲れているのかな? 悪い夢を見て、上手く寝付けなかったりしているのかな? もしかして、私の気持ちを分かってくれるのかな…? 画面の中の彼は、私のつらい気持ちを本当に分かち合ってくれる貴重な存在となっていた。

極めつけが、客先の古いビル。節電対策で照明の数を減らされた暗い廊下は、当初は歩くだけで気が滅入る場所だった。夜遅くなると静まりかえって余計に怖かったし、そんな客先に通うのが苦痛だった。でも、似ていたのだ。その廊下が、HADESのムービーに出てくる謎の廊下に。暗くて、真っ直ぐで、ドアがあって、何か出てきそうな雰囲気。ロケ地か? と疑いたくなるくらい似ている。それに気付いた日から私の出勤ライフは劇的に変わった。クソ長い打ち合わせの後でも、あの廊下を通るとテンションが上がりまくった。自然と笑顔になって、先輩とすれ違った時に「何かあったの?」と変に心配されたりもした。人が見てないタイミングを見計らってスキップしながら通ったりした。今思うと完全に不審者だったけど、つらい気持ちはもりもり減っていった。

気持ちが和らいでも死にたくなる日はあった。でも「死んだらあの赤い人に会える? 実質推しの握手会では!?」とプラスに考えられるようになっていた。今思うと完全にダメなタイプのポジティブシンキングだったけど、気がついたら苦しかったプロジェクトから脱出していたし、ゲーセンでまたHADESの人たちと会える時間ができていた。

HADESと出会っていなかったら、いま元気にゲーセンへ通っていられなかったかもしれない。そう思うと感謝しかない。
(※メンタルがつらくなったらおとなしく病院へ行こう!

ついでに仕事以外でも、HADESのおかげでいろんな苦手を克服していた。
私はホラー系コンテンツが苦手で、ホラー映画の予告をチラ見しただけでその日のうちに悪夢を見るくらいには弱かった。現実世界の暗い場所とかも、一人で居るのがとても怖い。それでも、今では暗いところには赤い人がいるんじゃないかと期待して、以前ほど怖く感じなくなった。
そもそも目力の強い怖いキャラ(青鬼とかねこですよろしくお願いしますとか)はとてもとても苦手だったけど、HADESの人はへっちゃらになった。なお、おじさんはもともと好きだったので更に好きになった。オタクの守備範囲はこうやって広がっていくのだ。業が深い。

ゲームの苦手もちょっとだけ克服した。HADESの譜面は苦手な要素がいっぱいだったけど、繰り返し遊んでいたら、苦手譜面と向き合えるようになった。そしてHADES以外にも、難しい曲を少しずつクリアできるようになっていった。HADESの難所に比べたら楽ちんでは? と思いながら挑戦すると、案外叩けてしまうのだ。HADESマジック。クリアランプが増えると音ゲーのモチベーションが上がる。モチベーションが上がるとプレー回数が増えて上手くなってる。HADESがもっと楽しく演奏できるようになる。するともっと難しい曲ができるようになる。楽しさと上達の輪廻。ここ数年伸び悩んでいた私には特に効いた。オタクは単純なもので、ゲームが楽しいと日常生活が明るく輝いて見える。仕事で蓄えた欝はどこへやら、今では楽しくゲーセンへ通う日々だ。


■HADESの供給はフロアにある

いいところづくめのHADESだけど、ひとつだけ難点があった。それは時間だ。曲とムービーと譜面による独特の世界は、2分ちょっとしか味わえない。それは音ゲー収録の勲章であり、宿命だった。

もちろん、いろんな都合を攻略できれば、曲だけは長いバージョンを聴ける可能性がある。でもムービーは長くならない。ソシャゲみたいに、担当イラストレーターさんが非公式らくがきをSNSに投下する、なんてこともありえない界隈だ。オタク的に言えば、今後の供給は絶望的。だがそんなことは関係ない。私は知っている、供給の薄い沼の底の味を。覚悟はできている。あの2分の世界があれば生きていける自信があった。

だが、その絶望は、なぜか良い意味で裏切られ続けた。私は何度も貴重な機会に出会うことが出来たのである。

今でも昨日のことのように思い出せる、2017年3月のEDP。ざっくり言えばライブだ。
鬱真っ盛りの中で参加したイベント、メインフロアがPrim登場で盛り上がる中の、セカンドフロア。
流れた。HADESが。
流した。曲を作った御本人たちが。
赤かった。フロア中のオタク棒が。
円盤には収録されなかったけど凄く濃厚な瞬間だった。キックを大音量で浴びる。肺がキックと同じリズムで震える。めいいっぱいフロアに詰まった客から歓声が挙がる。その中で私一人だけ別の空間に飛ばされたみたいだった。イメージ的には茶室である。HADESという概念と、畳1枚隔ててオタク棒を持ち正座する私。音楽を聴くはずの空間で何故か感じる静寂。時は止まっていた。やっと会えた。感動の瞬間。
残念ながら円盤は売り切れてしまっているので、せめて販促PVで雰囲気だけでも吸ってほしい。再販まだですか? 布教用にもう1枚欲しい。

youtu.be

 

 

もちろん私の参加していない他のイベントでもフロアにHADESが流れた日がたくさんあった。感想ツイートを見かけるたびに我が事のように嬉しかった。ちょっと悔しかったけど。私以外の人が楽しくHADESを聴いてるという事実が嬉しい。いいぞいいぞ~~~もっと聴いてハマってくれ。だって今なら、サントラも手に入るのだから!

 

■サントラ購入を迷ってはいけない

各地のフロアで供給が続く中、満を持して登場したのがサントラである。文字通り弐寺の音源を収録したCD、サウンドトラックだ。まだ手に入れていない人が居たら、下記のページから速やかに注文して欲しい。念の為書いておくと、下記のリンクをクリックしても私には1円も入ってこない。安心して散財して欲しい。

www.konamistyle.jp


HADESの音源は長らく発売されて来なかった。ゲームに実装されてから1年4ヶ月ほど待った。長かった。それが先日、2018年3月7日、遂に発売されて自宅に届いた。音源と一緒に、さらなる供給の爆弾を抱えて。

サントラは、まずは聴いてほしい。聴けば分かる。今回は弐寺24作品目のSINOBUZのサントラ(HADESはこっちに収録されている)と25作品目のCANNON BALLERSのサントラが合体して、CD4枚組という豪華仕様だ。しかもお値段据え置き。

「今どきCDなの? デジタル音源で良くない?」と思う方も居ることだろう。だが、CDにはブックレットとアートワークス集がついてくる。更に初回特典として、ポスターとゲーム内で使えるクプロというアイテムがついてくる。今回、HADESの民にとって一番重要なのは、アートワークス集とクプロである。決してデジタルリリースでは味わえないコンテンツだ。

クプロは、弐寺でのアバターである。サントラの初回特典にはだいたい複数のクプロが付いてくるのが定番だ。私は特に期待もせず「HADESのクプロも付いてきたら嬉しいのにな~」とのんびり構えていたのだがフォロワーさんから

とのリプライとともに送られてきたスクリーンショット。立ち並ぶデフォルメキャラたち。その一角が、赤い……?
後頭部を殴られたような衝撃。デスノートに名前を書かれたらこんな感じなのかもしれないと思った。動悸、息切れ、視界がふらつく中、必死で公式サイトを確認した。デフォルメキャラの中にやっぱり赤い人がいる。枕を持ってる。碓かに憑いてきている。な、なぜ!? 可愛いデフォルメキャラの中になぜ、リアル画風の赤い人を入れた!? そしてまさかの名前が判明!?!? ハデ……夢……くん……?!!? あなたはハデ夢くんとおっしゃるのか!??!? ついに、ついにあの世界感の公式設定が出た!!!!!

あまりのショックに息を引き取りそうになった。不整脈と動悸が酷い。だって今まで好きなキャラたちの名前すら知らないまま1年以上過ごしてきたのだ。断食中に突然フレンチのフルコースを流し込まれたら、窒息するに決まってる。 心臓病家系のオタクは供給ですぐ死ぬ可能性があるということを学んだ。HADESからの学びは多い。

そんなこんなでサントラが届いた後、早速特典クプロをゲットした。感動の対面。ムービーより顔が怖いのでは? と思えるくらいリアル、そして可愛い(重要)。だが見た目だけではない。クプロは、プレイヤーのアバターだ。ゲーム中でプレイヤーの代わりに動くのだ。怒ったり、笑ったり、泣いたりするのだ。ムービーでは笑顔一辺倒だった赤い人が、感情の赴くまま表情を変えてくれる。実際にゲーセンで見た時の、感動といったら。ついに推しがムービー以外の場所で動いた。感激しすぎて変な声が出ても、今作は森一丁さんの元気な声がかき消してくれるから安心だ。ありがとう美声のプロ。私のプレー次第で泣いたり笑ったりする赤い人、いや、ハデ夢くんを存分に眺めることが出来る。自分が頑張った時に一緒に喜んでくれる彼を見ていると元気が出る。彼の笑顔をたくさん見るためにも、もっと音ゲーを上手くならなければと誓った。

そしてサントラ付属のアートワークス。微妙にネタバレになってしまうけど、まさかの、HADESの、描き下ろしイラストが、来た。もしかしたら最後になるかもしれない公式からの供給なので是非手に入れて見てほしい。可愛い女の子とかカッコいい男の子とか載ってる中であのページだけ濃度が違う。すごい。そして制作陣からもファンからも愛されているのを感じて泣きそうになった。

説明を省いていたが、HADESのムービーを担当されている方はHADES以外のムービーも描いている。正直、描き下ろしはそっちの曲だと思った。そちらはそちらで素晴らしい曲とムービーと譜面なのでチェックして欲しい。「冬椿」で検索だ。冬椿は美男美女の切ないハートフルストーリーだ。こちらも非常に人気が高い。

でも、アートワークスは赤い人とおじさんのめくるめく追いかけっこの方が採用されていたのだ。ファンの反響あってのことだろうか。HADESのことが好きなみんな、ありがとう。そして神様ありがとう。

そんなわけで今回のサントラは隙がない。ロング枠もすばらしい。迷ったら買いだ。サントラは絶版になりやすい。後悔先に立たずというやつだ。

■HADESを聴こう、見よう、遊ぼう

とにもかくにも、私が言いたいことは一つだけだ。

HADESは、いいぞ。

聴いてよし、見てよし、遊んでよし。2分の世界の音楽でこれだけ人生が楽しくなるなんて思わなかった。色んな人にこの感覚を味わってもらいたい。
私はHADESを推しているけれど、どんな曲でもいいので、あなたの好きな2分の総合芸術を見つけてみて欲しい。音ゲーは楽しい。

それと、HADESに関わるすべての皆様には本当に感謝してもしきれません。今後も期待してお待ち申し上げております。

 

 

 2019/7/27追記:一部リンクが切れていたのを修正。

2020/9/23追記:一部削除して再公開。